1.はじめに
私は長年、大企業の企画部門でプロジェクトのマネジメントやリードを主たる業務としてきました。その中で一貫して意識し、今も実践している仕事術があります。 それが 「企画」と「作業」を分ける という考え方です。
多くの人は、仕事を“作業の連続”だと捉えがちです。 しかし、私の経験上、仕事の本質は 企画(考える)と作業(実行する) の二つで構成されており、この二つを混ぜてしまうと、手戻り・差し戻し・非効率が必ず発生します。
この記事では、私が実践している「企画と作業を分ける仕事術」を体系的にまとめます。
2.「企画」と「作業」とは何か
まず、私が定義する「企画」と「作業」を明確にします。
- 企画 :進め方・構造・アイデア・目的を、頭で考え整理すること。
- 作業 :企画で決めた考え・アイデア・方針に沿って、手を動かすこと。
ほとんどの仕事は、この二つの組み合わせで成り立っています。「私は現場仕事だから企画なんてない」という声もありますが、現場仕事であっても
- どの手順で進めるか
- どこを工夫できるか
- どうすれば安全・効率的か
などが挙げられるます。比率は違えど「企画」と「作業」はどんな仕事にも存在していると考えています。
3.「企画」と「作業」を同時にしない
私が強く意識しているポイントは 「企画」と「作業」を同時にしない ということです。(世の中には、これを同時にできてしまう方もいますが、私の経験上、そんな方は希少な存在と考えています)
例えば、上司から「業務上のルールや仕組みを新たに検討してほしい」と指示を受けたとします。ここで、すぐPCに向かう人がいます。 これは典型的な 「企画」と「作業」の同時進行 です。頭が整理されていない状態で作業を始めるため、次のような問題が発生しやすくなります。
- 思いつきで進める
- 内容が不足・不明確
- 上司からの指摘・差戻し
- 大幅な手直しが発生
- 結果として時間がかかる
PCに向かってキーを叩いていると、いかにも仕事している風に捉えられますが、PCのキーを叩く行為はただの「作業」です。 作業を正しく行うためには 企画(設計)を正しく行う必要があります。
4.私が実践している「企画」→「 作業」の流れ
私が同様の指示を受けたら、私はまず 企画(頭の整理) を行います。
(1)企画で考えること
主に以下のことを考え、頭の整理を行います。この段階ではPCには向かいません。ペンを持ち、紙に考えを書いていきます。
- 目的・概要は何か
- 最終ゴールは何か
- 相手は何を望んでいるか(求める精度は)
- どんな手順・スケジュールで進めるか
- 誰と進めるか
- 期待効果・メリット・デメリットは何か
- リスクや不確定要素は何か
- どこで確認を入れるべきか
(2)紙に書く理由
企画の段階で、紙に書く理由です。
- 自由に書くことができる
- イメージを描くことができる
- 構造化しやすい(カテゴリ・因果・プロセスなど)
- 何度も書くことができる
紙に書くことで思考が整理され、抜け漏れが減りやすくなります。また、紙に書いた状態のまま、上司に相談や方向性を確認してもらうこともできます。(仮に、その思考や方向性が違っていたとしても、手書きのため手戻りは最小限とすることができます)
紙を使用せず、PC(ツール)を使用してもできないことはありませんが、自由にイメージを書いたり、思考が発散しても柔軟に対応できるため、私は紙に書くことを意識して行っています。
また案件によっては「もう一人の意地悪な自分」を仮想し、わざと苦しい質問を自分自信に投げかけ、その回答を書いていくこともあります。これらの問に曖昧・抽象的な回答しかできないようであれば、さらに思考を深めることもあります。
- 「これは何のために行うのか?」
- 「これは端的に何をするのか?」
- 「どんな効果があるのか?」
- 「いつからやるのか?」
- 「どの手順で行うのか?」
- 「そう考えた理由は何か?」
- 「何に基づき算出したのか?」
ちなみに私は、ノートではなくコピー用紙を使っています。枠線や仕切り線がなく自由に書けること、頭の整理がついた後や気に入らない場合はすぐ捨てられることが理由です。

(3)「作業」は入力するだけ
「企画」で頭の整理がついたら、ようやくPCを開きます。 この段階では、考える必要はほぼありません。企画で決めた内容を、ただ淡々と作業(入力)するだけ。 設計が明確なので、スピードも精度も高く行うことができます。
(4)生成AI時代における「考えるプロセス」の価値
最近では「生成AIを使えば企画はすぐに出来上がる。効率よく作れるのだから、紙に書くなんて時代遅れだ」という意見もあるかと思います。 確かに、案件の求める精度やスピードによっては、効率性を重視しなければならない場面もありますし、すべてを自分自身で考えるのにも限界があることは理解しています。
一方で、生成AIを利用する際の懸念として「答えを出すために考えるプロセスが省略される」 という点があります。 考えるプロセスは人間らしい能力そのものではないでしょうか。
AIを使うこと自体は否定しませんし、私自身も活用しています。 しかし、AIに丸投げするのではなく、
- 自分の考えを持つ
- たたき台を示す
- 方向性を自分で決める
こうした思考の主体性を残すことが重要だと考えています。
そして何より「答えを出すこと」=「自分の頭の整理になる」ではありません。 AIが出した答えを受け取るだけでは、思考力は鍛えられません。 だからこそ、紙に書きながら自分の頭で考えるプロセスを大切にしています。
5.まとめ
仕事は大きく、 企画(考える)と作業(実行する) の二つで構成されています。そして、 この二つを同時にやらないことが、より質の高い仕事を進める上で重要だと感じています。
- 思考が整理されているため、考え方がブレにくい
- 論理的に構成されているため、他者の意見も取り入れやすい
- 精度が上がり、手戻りが減る
- 結果的にスピードが速い
私は企画部門で長く働き、現職でも企画要素が強い仕事をしています。 その経験からこの方法を磨いてきましたが、これは多くの職種に応用可能だと考えています。あなたの仕事にも、このシンプルな方法は必ず役立つはずです。
